アンヴォーカル・ピアノスクール代表の浅井です。
おかげさまで、最近、新規にご入会される方が増えていまして、
初めてレッスンに来られる方の中には、こんな方も多くいらっしゃいます。
「他のスクールに〇年通っていましたー!」
「声は大きい方なんだけど歌は苦手なんです」
「キーの高い曲がなかなか歌えるようにならない!」
これまでにも、スクールやカラオケで頑張って練習していた。
でも、思うように歌えない・・・
はっきりとした原因がわからない。
一生懸命練習しているのに、声が変わらないとモヤモヤしてしまいますよね。
何か練習方法に問題があるのでしょうか?
こちらの動画でも解説していますので、ご覧ください。
一般的な発声練習に潜む問題
一般的な歌のレッスンの方法は、このような流れが多いですよね。
①発声練習
→声の響きをよくする、音域を広げるため、声の音色を変えるため ②曲の歌い方の練習
→音程、リズム、しゃくり、ビブラート、フェイクなど
①から②の曲の練習に入ったとき、発声練習の時と同じらい歌声が出ていますか?
発声練習と同じ音域まで出ますか?
多くの方は、ここでNO!という答えが、返ってくるのではないかと思います。
「発声ではいい声が出るのに、歌になるとそれが生かせない」 「歌になると喉が苦しくなる」と、困っている方とても多いです。
発声練習で出した声がその人の真の実力だとすると、歌ではその50~70%の力しか出せないという方も多いと思います。
歌いこんでいけば少しずつパーセンテージは上がっていきますが、どうしたら効率よく、100%に近い声が出せるようになるでしょうか?
私も20年歌をやってきて、7名の声楽科やボイストレーナーの先生に教わってきましたが、ずーっとそこで苦しんでいました。
ボイストレーナーになって10年以上経ち、解剖学や音声学や言語聴覚など、色んな資料を調べ続けて、やっと原因を発見しました!!
そう、「舌」が問題です!
発声の時には主に母音を意識するので、舌はあんまり激しくは動きません。
でも、歌詞をしゃべる(言葉を発音する)と、舌が激しく動き、それによって舌骨も一緒に動いてしまいます。
舌骨が上にあがると、「喉頭蓋」という喉を開くのに大切な蓋が閉じます。
そうすると喉が詰まった感覚になり、喉が苦しくなったり、声が響きにくくなります。
舌が動く
↓
舌骨や喉仏も動く
↓
喉頭蓋も動く(倒れやすくなる)
↓
喉が締まった感覚がしたり、声の響きが悪くなる
「発声練習だと声が出るのに、歌になると同じような声が出ない」ということを解決するのは、舌のコントロールです!!
「舌骨を下げたまま、舌を動かす」
これを是非習得しましょう!!
舌骨が上がりにくい舌のポジションを覚えて、その位置で歌詞を発音できるように練習していくと、歌詞をつけても崩れない声になります!
まずは「舌骨を前下方へ動かす」ことが大切
- まずは、下記のイラストを参考に、舌骨を探し当ててください。
あごと喉仏の間にある細い骨です。
(中には、喉仏とくっついてしまっている方、顎の中に埋もれてしまっている方もいるかもしれません。顎周りの筋肉をマッサーで柔らかくしてから探してみてください。) - 舌骨を触りながら、ストローを吸うように息を吸います。
舌骨が前の下方向へ動いたのがわかりましたか? - 次は、舌を思い切りべーと前に出してください。
そのとき、舌骨は上にあがりませんでしたか?
そう、舌を前に移動すると舌骨は上がるのです。→喉が詰まる - 再びストローを吸うように息を吸って、舌を少し後ろに移動させましょう。
次に、舌の両脇を上の奥歯にくっつけるようにして、イーと発音してください。
さあ、その時の舌骨は前下方へわずかに移動しませんでしたか?
→これが「舌を上げて、喉が開くこと」ができている状態です。
つまり、舌が少し後ろへ移動し、舌が上がっている状態だと、舌骨が前下方にいき、共鳴腔(響きのスペース)が広くなります。
⇒これが「喉が開いたフォーム」ということです。
反対に、口を大きく開け、舌を下げた場合の画像です。
喉仏と舌骨が後ろへ引っ張られ、共鳴腔が狭くなります。
口の中の広さと共鳴腔の広さはイコールではないということがわかりますね。
口の中はあくまで、アイウエオなどの発音を変えるところであり、声の大きさとはほとんど関係ありません。
共鳴腔の広さを保ちながら発音する舌の位置を覚えていくことが大切です!
え、そんなことできるの・・・?
舌のポジショニング・トレーニングをしていけば、きっとできるようになります!
ボイトレ業界初!?舌のポジショニング
①舌骨を下げた「オ」の舌の位置を覚える
先ほどのように、ストローを吸う時の息の吸い方をして、この下の絵のように舌先を口の中の一番底の部分(口腔底)に来るようにします。
軽く浮いた状態でも大丈夫です。
くれぐれも舌先が歯につかないこと。
舌の画像のように、舌を喉ちんこへくっつけるくらいのつもりで、舌の奥を上げるようにします。
ただし、注意があります!!
あごと舌骨の間にある、オトガイ舌骨筋や顎舌骨筋という筋肉を、固めないようにしてください。
声を出すときに、舌がUの字のように凹んでしまう方は、この筋肉が硬くなりやすいです。
舌は凹ませることなく、横へ広げるようにして言いましょう。
※「ウ」も同様に練習してみましょう。
②「オ」から「ア」に移行する
- ①の「オ」の舌の位置のまま、「ア」持っていく練習をします。
舌先は、少し浮かせるようにします。 - 舌骨も下がったままをキープし、同じ音で「オーアー」とつなげて言います。
- 「ア」の母音に変える時に、口を横に開いて、上唇を前歯が見えるくらい上げるのがポイント!
- 低音から始めて段々と音程を上げて練習していきます。
音程が高くなると「ア」に変える時に、舌骨も上がりやすいので注意してください。先ほどのオトガイ舌骨筋や顎舌骨筋を硬くしないようにすること、舌を凹まさないようにすることを気を付けてくださいね。
③舌を挙げて「ン」を言う
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- 「舌を上あごにピッタリつける感覚」を身につけていきます。
- 口を開けたまま、舌の奥まで上あごにつけて、「ン」を言います。
先ほどとおなじように、なるべく前歯が見えるように開けます。 - 上の前歯より後ろで、上あごの凹んでいるあたに舌先をつけてください。
- その状態で舌骨を触ってみてください。
平常時より、舌骨が下がっているのがわかりましたか?
「舌を上げたら喉が上がる」と言われたことのある方も、舌が上がっても、舌骨を下げることができる!
ということを実感していただけたら嬉しいです。 - 舌を上あごにつけて、「ン」を言いながら地声から裏声へ、一気に1オクターブ上がったり下がったりしてみましょう。
舌骨が下がっていれば、ひっくり返ることなく、声が高音までつながります。
軟口蓋(のどちんこ)のあたりに、声が響いている感じがしたらOKです!
※もし、舌がピッタリ上あごに付かない、舌先がわずかにつく程度という方は、「低位舌」の状態が考えられます。
→低位舌に関してはこちらのテレビで取り上げた情報をご覧ください。
「低位舌」の状態でしたら、そこを改善しないと舌のコントールは難しいかもしれません。
舌のマッサージをして、舌の裏側をほぐすところから始めましょう。
③「ン」から「イ」への移行
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- 「ン」の口を開けたハミングから「イ」へ、「ンーイー」とつなげて言います。
- 「イ」になった瞬間に、舌の位置は「ン」の上あごにピッタリつけた状態から、舌が2ミリくらいしか下がらないようにしてください!!
- それと同時に、イの時に舌を1センチほど『後ろに』移動させます。
「イ」は、舌が前に行きやすいので、舌を後ろに移動させるくらいでちょうどいいです。
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声の聴こえ方としては、「ン」の響きから比べると「イ」が詰まったような声、細くなったような声に聴こえた場合は、舌がまだ前すぎます。
舌の位置をもうちょっと後ろにして、声が細くならずに、よく響く舌の位置を探してみましょう。
④「イ」から「エ」への移行
「イ」ができたら、次は「エ」の練習です。
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- 舌が「イ」の位置より、なるべく下がらないように「イーエー」とつなげて言います。
- 頬骨を上げて、上の前歯が見えるようにしますが、唇は縦にしたいので『アヒル口』に。
- 下あごを動かさないで、頬骨と唇、舌の調節だけで言えるように何度も練習しましょう。
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まとめ
舌の位置の考え方について
いかがでしたでしょうか?
一般的なボイストレーニングの方法では、「舌を下げよう」という指導が多い中、私は逆のことを言っていましたね。
舌を下げると喉頭蓋から軟口蓋までの部分はよく響きますが、そこの響きを増大させると、クラシック的な響きの声になります。
私も声楽やっていた20年は、先生方に舌を下げるように言われていたのでそうやって歌っていました。
でも、ポップス、ロック、R&Bなど、地声の響きで歌うには、舌を下げることが障害になっていました。
何年もかけて試行錯誤した結果、舌を上げたほうが、地声感のある高い声が楽に出るようになりました。
これは音声学的に見て、声道の長さが短くなり、倍音が含まれやすく、マイク乗りのいい声になるからです。
周波数が高くなるので、科学的にみても聴きとりやすい声ということなります。
それでも、「舌を上げるのは違う」「舌は下げるものだ」と思う方がいるかもしれません。
もしあなたが、舌を下げながら歌っていても自分の思い通りの声が出せて歌えているなら、それが合っているのかもしれませんし、困っていないのならば、あえて変える必要もありませんよ(^^)
これまでは、歌の指導の世界で、舌の位置に関してはあんまりフォーカスされてこなかったので、色々な方が研究して、
「もっとみんなが効率よく歌が上手く歌える方法が見つけられればいいなあ・・・」
と、そんな思いを持っています。
なので、舌を上げることによるデメリットなんかを感じている方がいましたら、どんどん言ってきてください!
もっといい方法がないか、一緒に研究しましょう♪
舌と舌骨の関係性
また、先ほども言いましたが、舌を前にすることをおすすめしないのは、舌骨が上がるからです。
舌骨が上がると、身体の中で最もよく声が響く場所と呼ばれる、声帯と喉頭蓋の間(咽頭共鳴腔)が、狭くなってしまい、声の響きが悪くなります。
舌骨が上がると、喉の詰まりを感じたり、声のひっくり返りも起こしやすくなるので、下げるようにした方が得策です。
NOZOMI式ボイストレーニングを、生徒さんたちにもトレーニングしてもらうと、声がドンドン変わっていっています。
もちろん、舌の長さ、顎の形状などが人によって違います。
実際のレッスンでは、その生徒さんの身体に合わせるので、ここに書いてあることと、全く違うことを言う時もあります。
その人の歌い方の癖や口の動き、舌の動きを見ながら、「この言葉では舌をもっと上に」などと指示をして、その方に合った舌のポジションを覚えていただいています。
舌の位置が安定すると、軟口蓋が上がりやすくなる
クリアな声、高音で突き抜けるような軟口蓋が上がることが必要です。
ボイストレーナーにそう指導されたことがある方も、多いのではないでしょうか。
軟口蓋を上げようと思っても上がらない方の多くは、舌が下がってしまっているからです。
軟口蓋を上げる練習より、舌を下げない練習を先にしていただいた方が、ダンゼン効率が良いですよ!
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