こんにちは、ボイストレーナーのNOZOMIです。
これまでも、歌う時の舌のことを取り上げてきましたが、まだまだ多い「舌を下げたら喉が開く説」
改めて、まとめてみたいと思います。
「舌を下げたら気道がふさがる」「舌を上げたほうが『気道が開く』」ということを、これまでもお話してきましたが、これは私の『持論』というのではなく、医学的に言われていることです。
昨今では、舌が口蓋につく圧力を計測する「舌圧測定器」というものもあるほどで、誤嚥防止(飲み込む時に間違って気道に入ること)のために、「舌を上げましょう」「低位舌」を治しましょうと、盛んに言われています。
下の画像を見ていただくと、舌を上げたほうが、喉の奥=咽頭共鳴腔が開くというのは一目瞭然です。
上の画像は、これまでに何度も取り上げていますので、今回はちょっと違った視点からお話していきたいと思います。
舌根沈下とは?
みなさんは、舌根沈下という言葉を聞いたことはありますか?
舌根沈下とは、寝ている時に、舌根が奥へ落ち込んで気道を塞いでしまうことです。
舌根沈下が起きると、呼吸が止まります。
いわゆるこれが、無呼吸症候群というやつです。
肥満気味な人がなるものとイメージしているかもしれませんが、実はそうではないんです。
首が太くて短い人、
舌や舌の付け根が大きい人、
下あごが小さい人、
あごが引っ込んでいる人など、
いつも口呼吸をしている人
が、無呼吸症候群にかかりやすい特徴があるそうです。
私も前に入院した時に、お医者さんから「下あごが小さいから無呼吸症候群かもね」と言われ、寝ているときに検査をし、そう診断されました。
そのため、舌が気道を塞がないように、下顎と舌を前に引き出すマウスピースを作った方がいいと言われました。
そのマウスピースは、つけると痛くて眠れなかったので、結局1回しか使いませんでした。
調べてみると、無呼吸症候群の人は、正常な人よりも死亡率が9倍も高くなるとのことで、治すには舌を上げるトレーニングも有効だそうです。
ですから、その逆をいく”舌を下げる筋トレ”は、誤嚥しやすい人、無呼吸症候群の人には命にもかかわることなので、おススメできないなと思いますね。
歌っているときの舌・顎の状態とは?
やっと本題です。
本題の歌っているときの舌と顎は、どうなっているでしょうか。
基本的に起きた状態で歌いますので、下顎は寝ている状態よりも後ろへは行かないですね。
ただ、日本人では、私に限らず、下顎が小さかったり、元々下顎が後ろに引っ込んでいる方が多いです。
長時間のスマホやパソコンの丸まった姿勢で、結果そうなってしまった人もいます。
このような人が大きい口を開けると、顎が更に後ろに行くので、声道・気道を圧迫します。
歌がなかなか上手くならないという人は、高確率でこのような顎です。
私がどれだけ顎が小さくて後退しているかは、欧米人と比較していただくと、悲しいくらいに差は一目瞭然ですね。
欧米人は、顎が後退しているどころか、前に突き出ていますね。
しかも、欧米人はアジア人よりも頭蓋骨が横長なので、顎関節の可動域も広いんだそうです。
日本人でも、エラが張っていたり、下顎がとんがっている人は、口を開けても下顎が後ろにいきません。
ですから、舌を下げても、喉が閉まっている感は少ないと思います。
むしろ、舌を下げると、この前から取り上げている頬の内側にある内側翼突筋は伸びますので、喉が開いた感覚がします。プロの歌手やボイストレーナーとして活躍してる人は、恵まれた顎の人が多いので、「え?舌を下げると喉が詰まる?意味がわからない」って感じなんでしょうね・・・
じゃあ、顎が引っ込んでいるタイプの人も前に出しながら、舌を下げればいいんじゃない?と思いますよね。
その疑問にお答えします。
下顎が後退している人が、舌を下げると、舌骨上筋群が硬くなります。
舌骨上筋群が硬くなると、声が割れて、高音が出せなくなります。
ですから、顎が後退している人は「下あごを前に出す」のが絶対条件です。
軟口蓋と舌は繋がっているので、舌を上げたほうが軟口蓋も上がりやすくなりますので、ぜひ試してみてください。
声に悩む日本人に合ったボイトレとは?
このような理論は、私自身の声の問題解決と、20年近く沢山の生徒さんの声の改善のために集めた知識です。
つまり、舌骨発声ボイストレーニングは、コテコテのアジア人骨格の私が、欧米人と同じくらいの声が出るようにするにはどうしたらいい?
と、研究と試行錯誤を重ねて約20年をかけて生み出した、日本人のためのメソッドということなんです。
自分が立てた仮説は、本当に合ってるのだろうかと、国内外の資料や医学的な論文で人間の身体の構造を調べて、確認をしています。
それで、よし大丈夫だと思ったことのみ、発信しています。
それに、正直言うと「私の歌を真似していけば、上手くなるよ!」と胸を張って言えるほど、歌に自信があるわけじゃないです。
歌は30年やっていますが、自分で納得いく歌には、まだなり切れていないので実際にちょこちょこレッスンも受けています。
「自分ができないことを人に教えるな」という人もいるかと思いますが、「健康で病気になったことのないお医者さん」が、必ずしも名医と言えるわけではないですよね。
クライアントさんに対して、どれだけ正しい知識と的確な診断力があり、良くなるようにしてあげられるかが重要なんじゃないかなと思うんです。
欧米人に近い恵まれた骨格と声をお持ちの人が、ボイトレを”ゼロ”から始めると表現するなら、そうでない人はマイナスからのスタートです。
だからと言って上手くならないとかではなく、「自分に合った方法でボイトレを受けることが大事!」
それを声を大にして言いたいです!
ボイトレは、他のスポーツや医学と違って「発声を科学的」に研究している専門の大学もないですし、非常に未熟な業界なんです。
ですから、まだまだ「昔からの言い伝えを教える」レッスンが行われています。
私の話は超マニアックすぎて、よくわからない人もいるかと思いますが、実際のレッスンは実践メインなので、初心者さんもご安心ください。
体験レッスンのお申込みお待ちしています♪